「十二年後のぼくへ」

この春小学校を卒業した息子は、卒業旅行ということで、はじめて友達と二人で京都に出かけました。こちらまでワクワクとドキドキがとまりません。
初めのほうは順調だったそうですが、親の期待通り、水族館で買ったお土産を鉄道博物館で忘れ、帰りの電車に乗りそこなうというハプニング。どうにか、お土産を取り戻し、次の電車で帰ってきました。慣れない敬語を頑張って使ったせいで、最後に綾部からかかってきた電話は、
「僕です。今、綾部です。今から乗り換えて西舞鶴に帰るのでもうすぐ着きます。迎えをお願いします。」
(誰にしゃべっとんねーん。)

そんな彼の等身大の卒業文集。
ステキだから載せてい~い?と聞くと、一円くれたらいいと。あとで十円と言い直したけど。(笑)

「十二年後のぼくへ」

未来、それは大きな可能性を秘めているもの。十二年後、ぼくはどうなっただろう。
十二年後のぼくへ。ちゃんと元気でやっていますか。人に迷惑をかけたりはしていませんか。ぼくは、君にたくさん質問したいことがあります。
ぼくは、一人立ちして家を出てから、どこかいいアパートを見つけて住んでいますか。野宿なんてのはやめてくださいよ。
それと、ぼくはなりたいものが決まりましたか。そして、その夢に向かって努力していますか。ぼくは、まだなりたいものもが見つかっていません。だから、早く自分のやりたい仕事を見つけられるといいと思います。もし、もう見つかって働いているのなら、その仕事は、将来せいのある仕事ですか。ぼくは、まとまったお金ができたら世界一周をしたいと思っているので、がんばってお金をためていることと思います。
ここで少し、小学校六年間の思い出を書いておこうと思います。
一年生は、一人だけちがう保育園から岡田小学校に入学して、すごくはずかしかったことをおぼえています。ぼくは、よくふざけたりしておこられていました。
二年生、少し学校にも慣れて、だんだんと友達も増えました。ぼくは二年生で、のりもの探検にいったことが思い出です。
三年生は、理科や社会が入ってきました。むずかしいと思っていた理科や社会は意外と簡単でした。
四年生、委員会やクラブがあって高学年の仲間入りをした気分になりました。
五年生、野外活動は、みんなで計画を立てて楽しく活動ができたことが思い出に残りました。
六年生、ついに最高学年六年生となり、すこし、自覚や責任感などを感じ、リーダーとなって、全校をを引っ張りました。修学旅行はとても楽しかったです。できればまたいきたいなあ。
これから、あきらめてしまいそうになったり苦しくなったりすることもたくさんあるでしょう。でも、あきらめずに、どんなことがあっても自分なりに考えて進んでいいってください。
最後に、ぼくが一番伝えたいことを書いておきます。周りから自分に影響があり、考え方や、生き方が大きく変わったりすることがあるかもしれません。でも、自分の命だけは大切にしてください。人生は一度きりです。後悔のないように生きていってください。

 

 

朝の音

Sakumi節(ブシ)炸裂です。

「朝の音」

ぼくは、おきていた。目をぱっちりあけた。急に目が覚めたのだ。こういうことはしょっちゅうある。ぼくは、さぐるようにして手をまだ暗いやみの中で動かし、自分の目覚まし時計を見つけ、時計の明かりをつけた。まだ四時だった。
ぼくは、また目をしずかにとじた。しかしなかなかねつけない。がばっとふとんから起き上がった。すこし考えて、げんかんの近くのまどに行ってみた。外はまだうすぐらい。六月の朝はひんやりすずしく昼まの気温とはちがっていた。ぼくは一度大きく深呼吸をした。冷たいひんやりした朝の空気が体の中に入っていく。こうするととても気持ちがよくてすがすがしい気持ちになる。さて、またふとんにもどろうとしたら、ふと家にあるハンモックが目にとまった。ぼくは、
「ハンモックでねてみるのもいいかもな。」
と思って、ハンモックによっこらしょと体をおろしてねっころがった。ふとんはあつくるしいがここはとてもすずしくてきもちいい。
外を見ながらぼくは目をとじた。いろんな鳥のさえずりが聞こえる。ホーホケキョと森のおくでうぐいすの声がこだました。それからいっせいに、ピロロロ。ピーピーと鳥のさえずりが耳にとびこんできた。ぼくは、ふと森の中にいた。歩いていくと鳥のさえずりがきこえ、サラサラと小川の音もきこえた。ぼくは、森の中をずっと歩いてその音を楽しんだ。
そっとまぶたをもちあげた。そして、体をおこし庭を見てみた。まだ外はうすぐらく庭の木もぼやーっとみどりがみえるだけだ。ずっと見ているとだんだん明るくなり木もわか葉のみどりもまぶうしいくらいに目にとびこんできた。
「うわー。」
思わず感動の声をあげた。まえにもこんなのを見たことがある。そうそう、まえの夏休みのときだ。あのときも早起きして森をみてたんだっけ。あのときは、ひぐらしが鳴いてカナカナカナ―という音でもう夏も終わりという気がして悲しんでいた。ぼくはそうやってまえのことを思いだすと、またまぶたがおもくなりぐっすりねた。
朝、トントンというほうちょうの音で目が覚めた。もう外はすっかりあかるくなっていて、太陽の光がさしこんでくる。ぼくは、重い体をゆっくりおこした。朝早く起きて見たこう景が昔のことのようにかんじる。ぼくは、はっとわれにかえりいそいでばたばたと食たくへかけていった。
学校にいるときも、ふと思った。また見たいな。そう思って、まどの外をながめた。
外では太陽がきらきらかがやいていた。

 

 

ほたる

Mahoの日記

「ほたる」

わたしはきのうの夜、ほたるをさがしに行った。うすぐらい道をさくみくんとわたしで、そおっとそおっと歩いて行った。すると、川の方に小さな明かりがうかんでいた。その明かりはどんどんわたしたちの近くに近づいてきて、一まいの葉の上にちょんととまった。よく見ると、オスのほたるが明かりをつけてとまっていた。わたしはあみでそおっとつかまえて虫かごに入れた。とてもきれいな虫をつかまえれてうれしかった。さい後は四ひきつかまえて手のひらにのせてにがしてやった。ほたるは天高くまいあがって、まるで星のようにかがやいていた。

 

Sakumiの日記

「命の光」

6月ぼくはほたるを見に外にでた。ぼくの住んでいるのは山の中。この季節になるとたくさんのほたるがとぶ。木にとまるほたるは光るクリスマスツリーのようだ。
ぼくはある夜ほたるを取りに出かけた。森はうす暗くぶきみだった。あつい雨季はじめじめしていてすごく暑い。夜になるとひんやりとすずしい風がふき暑さをわすれる。
ぼくは、ある小さな小川にきた。そこは小川というよりも水が森をおりていくだけのところといったかんじのところだ。ここはぼくのほたるとりの場所にはもってこいだった。
ぼくの家の前を流れる川にはカゲロウやカワゲラのよう虫が石の下にたくさんへばりついているようなとてもきれいな川だ。この川にはホタルもあつまる。しかし、最近年々とホタルの数がへっているように見える。まえはまぶしいくらいにたくさんのホタルがとんでいた。みぞこやらもぜんぶコンクリートでうめられきたなくなり、近所の人も田んぼをやめたのでホタルが少なくなったのだ。ひっこしたばかりの六月は、たくさんのホタルがいて、そのやめた田んぼで大っきなうしがえるやおたまじゃくしをとったのをおぼえている。
「ああ。ぼくの大好きなまえの自然。ホタルがいて虫もいて、毎日川に入ってあそんだりしてとてもたのしかった。」
ぼくは、今、ホタルがへっていたりしているのを感じるとかなしくなる。あと30年。いやもっとたてば、本当の自然という物はなくなりホタルも絶滅きぐ種になるにちがいない。
まえ美山にいったときはとてもうつくしい森がひろがってすてきなところだった。きっとあそこにはかぞえきれない数のおびただしいホタルがいるにちがいない。
「ここもあんなところにしたい。」
そう思った。
さて、ぼくはその小川でじっとまっていた。すると目のまえにぽつりぽつりとホタルがたくさんとんできた。きいろと緑がまざった光がしゅーとぼくの目の前をとおりすぎていく。ぼくは、そのうつくしいこう景にみとれて我にかえりホタルをとった。手の中に入ったホタル。手をそっと広げると光って真暗な空に飛んでいった。いつのまにか虫かごにはホタルが入りきらないぐらいになっていた。
ぼくはいつもつかまえた虫はにがすようにしている。虫かごのふたをあけて、ホタルをにがした。たくさんの光が虫かごからながれでた。ぼくは、それを空をみあげてみとれた。いつまでもいつまでも見ていたかった。一つ一つのホタルの命の光を燃やし、夜空へと消えていった。ぼくは、ホタルの光のたましいが星になるのかなあと思った。
ホタルはだんだん数は少なくなっているけど一つ一つがきちょうな命の光でぼくには小さな小さな光だけど、あたたかみや感じ方は大きな大きなものだと思った。これからもホタルが豊かな自然とともにくらしていってほしい。

 

Sakumi物語

小学5年生になり、日記の宿題はなくなったようで、なかなかSakumi日記を読めなかったのだが、物語を書く課題がでたそうだ。ちらりと読んでみると、これまた、普通に一読者としておもしろい。

 

「夏のふしぎなぼうけん」 

夏の暑い日。あれはぼくが、三年生のときだった。
 あの日は家族みんなで、山に出かけにいった。ぼくは、いつのまにかにか車の中でうとうととねむってしまった。 
はっと気づいて目がさめると、そこは森の中だった。上のほうからは、鳥の鳴き声やせみのやかましい音が聞こえる。ぼくは、すっかりおどろいてしまった。さっきまで車の中でねていたのに起きてみたらこんなところに来てしまっていたのだ。ぼくは、すこしこわくなって、みんなをよんだ。
「おかあさーん。」
「おとうさーん。」
「かづやー。」
しかし、いくらまっても返事はなかった。ぼくは、ぽつんと一人取り残されてしまった。ぼくは勇気をふりしぼってもっと森のおくのほうに歩いていった。
 そこは、じめじめしていて暗く、不気味なところだった。ふるえながら歩いていくと、大きな木がつっ立っていて、におうさんみたいに道に立ちふさがっていた。と、その木にみょうに不思議なあながぽっかり空いている。ぼくは、まじまじとのぞきこむと、あなの中にすいこまれてしまった。その中は目がくらむようなまぶしさだった。ぼくは目をぎゅっとつぶってどんどんすいこまれていった。
「わぁ~。」
そのしゅん間、どすっとどこかに落っこちてしまった。
ぼくは、体がちくちくして目がさめた。どうやら気絶してしまったらしい。
体がちくちくしたのは、大量のくっつきむしがくっついていたからだった。
そこは、草ぼうぼうのしげみの中だった。がさがさっ何かが近づいて来る。ぼくは、息をのんで何が来るか待ち構えた。がさがさっ次のしゅん間しげみから大きな何かがとび出した。ぼくは、
「もう終わりだ。」
とつぶやいた。が、何も起こらない。おそるおそる顔を上げると、ぼくは、息がつまりそうになるくらいおどろいた。なんとそこには、ぼくの何倍も大きいバッタがいたのだ。ぼくはおどろいて、
「ここはどこなんだ。」
と言うと、バッタが言った。
「ここは、虫の世界だ。お前はだれだ。どこから来た。」
そうたずねられて、ぼくはびっくりした。へんなところへ来たと思ったら虫がとてつもなく大きくて、それにしゃべれるのだ。ぼくはもう、何が何だか分からなくなった。ぼくがぽかんとしているとまた、バッタが言った。
「おまえはだれだ。」
ぼくは、うろたえながら言った。
「ぼくは、けんじ・・・。」
それだけ言うとバッタが
「おまえは虫か。」
と聞いてきた。
ぼくは虫とまちがえられるのもいやなので、
「人間の子ども。」
と答えた。
するとばったはみょうにおどろいて、
「なぜ人間が・・・。」
とつぶやいた。ぼくは、いっこくも早くここから帰りたいからもとの場所ににげようとした。しかし、バッタはぼくをつかまえて、
「どうやって来た。」
と聞いた。ぼくも、あまりどうやって来たかは分からないから、
「分からない。でもあそこからここへきたんだ。」
と言ってさっきの穴のほうを指さした。そしてそこまでバッタといっしょに走っていって、あなのあったところをのぞきこんだ。だが、そこにあったはずのあなが消えている。
「もう帰れないかもしれない・・・。」
そう思うとすごくさびしかった。だがこのバッタなら帰り方を知っているかもしれない。そう思って、ぼくはまっ先に聞いた。
「ここのあなはふさがってしまった。でも、きみは、ほかの帰り方を知らないか。もし、知っているなら教えてくれ。」
すると、バッタは不思議なことを言った。
「ここの言い伝えで昔、一人の人間がここに迷いこみ、長ろうに帰りたいと助けを求めた。そこからはその人間がどうしたかは知らない。だが長ろうなら何か知っているかもしれない。帰りたいのなら長ろうに聞いてみるといい。」
ぼくは、もしかしたら帰れるかもしれないと思い、
「その長ろうのところまで連れていってくれ。」
と言った。そしたらバッタが
「おれのせ中にのれ。」
と言った。ぼくは、少しどきどきしながらバッタのせ中にとび乗った。
いきおいよくバッタが走り出した。いや、走るというよりも大ジャンプをしてものすごい速さでとんでいるといったほうがいいだろう。
身を切るような風が体にふきつける。あっというまに長ろうが住んでいるところにたどりついた。そこは、土がもり重なっていて、そこに大きな穴が空いていて、下に草がしいてあるというようなところだった。
ぼくとバッタは、あなのおくのほうに入っていった。少し行くと前に大きなとびらがあった。そこでバッタが
「おまえはここで待っていろ。」
そう言ってから、とびらをあけて中に入っていった。
そこのろうかのような所は、横にたいまつがゆわえつけてあって、少し暗かった。やっぱり一人だと心細い。バッタがいたほうが心強かった。しばらくして、とびらがあいた。とびらから少し顔を出したバッタが
「入ってこい。」
と言った。
ぼくは少しおどおどしながら入っていった。そこは大広間だった。前のほうに、大きないすにすわっているカブトムシがいた。そのカブトムシはいかにも長ろうそうにひげを生やしていて、けっこう年をとっていそうだった。
ぼくは、その長ろうの前にすわった。長ろうが話はじめた。
「人間の子どもよ。いかにもわしは長ろうじゃ。それで、聞きたいことは何じゃ。」
ぼくは、思っていることを話した。
「ぼくは、人間の子どもです。ぼくは、木にあいていたへんなあなにすいこまれてここまで来ました。しかし、そのあながふさがってしまって帰れなくなってしまいました。でも長ろうなら帰る方法を知っていると思ってやって来ました。何か知っていたら教えてください。」
長ろうが答えた。
「昔。ここに人間が迷いこんだことを知っているかな。」
「はい。」
ぼくが答えた。
「言い伝えによるとその人間は、ぶじに帰れたらしい。そして、帰るための方法を古い書もつに残して帰っていったという話だ。たぶんここにあったと思うんじゃが。」
そう言って長ろうは大きな本だなからほこりだらけでぼろぼろの一さつの本を取り出した。
「これだこれだ。」
といって長ろうはその書もつをぼくに見せてくれた。ぼくは、それをのぞきこむように読んだ。
「ここから東の山のてっぺんに、石のくぼみあり、そのまん中に勇気の光をそそぎいれ、さすれば道はひらかれみちびかれん。」
とそこには書いてあった。
ぼくは勇気の光というのが気になってたずねてみた。すると長ろうは、
「勇気を持ってそこまでいくんじゃないかのー。」
と言った。よく意味は分からなかったがまあこの書もつがあって助かった。それは、この書もつには、そこまで行くための地図がはさんであったからだ。ぼくはだんだん希望がわいてきた。
「これで帰れるぞ。」
と思ってわくわくした。
長ろうはぼくにクワガタのへいしとバッタをつけてくれた。これで安心だ。
ぼくたちは、またあの暗いろうかを通って外に出た。中が暗かったせいか、外はすごくまぶしかった。さあ、出発だ。ぼくたちは地図を見ながらまず東の山へ向かった。
二人は先歩いていく。ぼくはつかれてきた。ぼくが、
「もうだめー。」
と木によりかかったそのとき木が大きくゆれて上のほうからぶーんと音がした。ぼくは、歯をガタガタいわせてふるえながら上を見た。
「ハチだ。それもものすごく大きいスズメバチだー。」
ぼくは、そうさけぶとわれ先にと二人を追いこして、にげ出した。二人は、
「どうしたんだー。そんなにあわてて。」
と聞いてきた。ぼくはこんなときにそんなこ聞くかよと思いながらあわてて言った。
「後ろ見てみろ。後ろ。」
そうして二人はふりかえって
「ひえ~。まじかよ。」
と言いながら走り出していた。
ぼくはというと、急いでしげみの中にとびこみかくれていたそして、二人の様子をうかがった。なんとそこでは、さっきまでにげていた二人が勇かんにハチに立ち向かっていた。ぼくは、今のうちににげようと思ったがこ一言ですべての思いが変えられた。
「助けてくれ~。お前も戦うんだ。」
目の前で二人がやられている。
「助けなければ。」
ぼくは、勇気をふりしぼってハチにいどんだ。
「待て。ぼくが相手だ。」
そうさけんでぼくは、そこに落ちていた木の枝を拾いハチをたたきつけた。いっしゅんにげようかと思ったが、その思いをこらえた。ぼくのおかげで二人とも立ち上がりハチを見事にやっつけた。
ここでぼくはふと思った。もしかしたらこういうふうに勇気をふりしぼって戦うことが勇気の光につながるんじゃないのかと。
 ぼくたちは、それからしばらく休けいし、また歩きはじめた。ずっと長いこと歩いていた。まわりは木ぎがおおいしげる森の中だった。すごく豊かな森でときどき水のわきでている所へ行っては、その冷たいひんやりとした水で足を洗った。その森をぬけたときだった。前に大きな緑の山が見える。
「あれだ。」
とクワガタが言った。ようやくたどりついた。ほっと気がぬけた。だがここからがいちばんたいへんだ。この山のてっぺんまで行かなければいけないからだ。
ぼくは、まえよりも気をひきしめて緑の山に向かった。山はすごくまえよりも豊かだった。木にはコケが生え、すみきったいずみがわきでていた。ぼくたちはそんな森をずんずんすすんでいった。
 もう少しでてっぺんというときに、つるでできたはしがかかっていた。下には谷間がひろがっている。ぼくは、せ中のほうにさむけがはしった。足がものすごくふるえる。ぼくはごくりとつばをのみこんだ。すごいきんちょうかんがぼくをおそう。ぼくは、思いきってはしをわたりはじめた。ものすごくはしがゆれる。ぼくは、目をつぶった。
「こわくないこわくない。」
とつぶやきながら歩いた。つるのわくにしがみつきながらもようやくはしをわたり終えた。
やっとてっぺんにとうちゃくだ。気がつくともう夕ぐれになっていた。真っ赤な日が山にしずみかけていた。そのあたたかい光を見ていると、おかあさんやおとうさんのことを思いだした。みんながなつかしい。そう思うと、急に帰りたくなってなみだがあふれでてきた。
「いくぞ。」
とバッタが言った。ぼくはなみだをふいて
「うん。」と言ってついていった。
 てっぺんのあちこちをさがした末、ようやく石のくぼみというのが見つかった。
「もんだいは、ここに入れる勇気の光だ。」
とバッタが言った。
ぼくはハチと戦ったとき、ふと思いついたことを二人に話してみた。
「あのさあ、ハチと戦ったときに思ったんだけと、いままでしてきて、勇気が必要で勇気を持って何かしたときのことを思いだしたらいいんじゃないのかな。」
とぼくは話して、みんなで今までのことを思いだした。すると急に石のくぼみのところが光りだして、ぼくがすいこまれたあなとそっくりのあながあいた。ぼくは、
「このあなだ。このあなにはいればいいんだ。」
と言った。これでやっと家に帰れるんだ。でも、これで虫たちともお別れだ、と思うとかなしくなった。ぼくは思いきって
「今までありがとう。さようなら。さようなら。」
と言って穴に入った。ぼくはいつまでも手をふり続けた。
 気づくとぼくはあの大木の前にいた。
「あれはゆめだったのだろうか。」
とぼくはふしぎに思った。とおくでお母さんのよぶ声が聞こえる。ぼくは、うれしくなった。